リーマンショックがやってきた

昨年9月16日の朝、連休中の多くの仕事を数時間前に納品し終えて短い睡眠から目覚めた私は、普段と変わらない朝を迎えたつもりでテレビの電源を入れました。
最初に飛び込んできたのは「リーマン破たん」のニュース。私は一瞬わけが分からず固まっていましたが、次の瞬間、会社の経理を担当している夫を起こしに2階に駆け上がりました。
リーマンの財務状況が悪化しているのは分かっていましたが、サブプライム問題で米国の金融機関はどこも業績が悪く、インベストメントバンク投資銀行)とも呼ばれるあの巨大な証券会社をそのまま破たんさせるとは思ってもいなかったのです。その前にFRB(米連銀)が救済に動き、ベアスターンズのように他の大手金融機関に買収されるなり、吸収されるなりすると思っていたのです。
「あのリーマンが破たん?そんなはずがない」というのが正直な気持ちでした。なぜなら、つい数時間前、毎週末弊社が請け負っているウィークリーレポートの翻訳を納品したばかりなのですから。
まだ眠っていた夫を起こすとまっさきに言いました。「リーマンが破たんした。うちはどれだけ売掛が残っている?」

私たち金融翻訳に携わっている者は、世界を揺るがすような経済や金融に関する大きなニュースや情報にいち早く触れられることが多く、それら生のホットな情報を真っ先に読み、翻訳し、待ち望んでいる世界の投資家に発信するという役割を果たせるのは金融翻訳者冥利に尽きるところがあります。しかし、今回のリーマンショックは、我々にとって世界を揺るがす情報を得る前に、そのうねりに直撃されたという滅多にない事件でした。

この度、ブログを大幅に改定し、金融翻訳とはどういうものか、金融翻訳者はどのような生活をしているのか、金融翻訳のプロになるにはどうしたらいいのか、ということから、私が14年前に金融翻訳専門のこの会社を立ち上げたときの状況、そこから現在に至るまでを、金融翻訳者を目指す方、金融翻訳に興味がある方、あるいはまったく金融翻訳について知らなかった方にも、面白く読んでもらえるように書いていきたいと思います。