リーマン…その後

さて、リーマンショックの後はどうなったかについてお話しましょう。
我々自身にとってもポジティブサプライズ(良い方に予想が外れること)だったのは、その後しばらく通常より忙しい日が続いたことです。私たちにとってリーマンショックは現実に納品した仕事のお金を払ってもらえるか以上に、この影響が金融業界全体に広がって、今後不況に陥り、金融翻訳の仕事も少なくなるのではないか、という不安の方が大きかったと思います。

しかし、実際には仕事は増えたのです。金融翻訳を専門としている弊社の例でいいますと、私たちが受ける仕事のほとんどが、外資系金融機関が投資家向けに出す調査レポートです。それは単発で出るものもありますが、通常はデイリー(月〜金の毎日)、ウィークリー(週1回)、マンスリー(月1回)、クォータリー(四半期に1回)というように定期的に出されています。ただし、何か特別なイベントが起こり、それが金融市場にも影響を及ぼすと考えられるとき、それについての臨時のレポートが発行されます。リーマンショックはまさにその特別なイベントでした。歴史も古い大手証券会社の突然の破たんで、金融不安は一気に広がりましたが、大手他社はこぞってそれが金融市場に及ぼす今後の影響についてのレポートを出したり、自社の状況は大丈夫であると投資家の懸念を和らげるようなコメントを出したので、通常の定期の仕事に加え、我々は単発で飛び込んでくるこのようなレポートの翻訳にも対応しなければならなくなりました。

例年、クリスマス前になると欧米系の金融機関はホリデーシーズンに突入し、そのころから年明けまではレポートを書くアナリストやエコノミスト、ストラテジストなどは長い休暇に入ることが多く、レポートも少なくなります。9月半ばに起こったリーマンショックは、その直後からその年の12月のホリデーシーズンに入るまで、私たちを例年以上に忙しくさせたのでした。